比べるために旅に出て、もう比べたい国がなくなるまでの記録。
INTROどんな本か
悩みは、だいたい自分のいる仕組みの中で生まれている。
そう気づいたのは、オードリーの若林正恭さん。40歳目前で東大の院生を家庭教師に雇い、戦後史と経済を学び直して、20代の自分を苦しめた「成功しないと人生は楽しめない」という声が、新自由主義という、人が作った一つのシステムの中の悩みだったと知る。
だったら、別の仕組みで暮らす人はどんな顔をしているのか。比べるための「カード」を、自分の目で手に入れたい。そうして一人で向かったのが、社会主義のキューバ。続いてモンゴル、アイスランド。文春文庫の旅エッセイです。
書名がまずいい。表参道のセレブ犬と、カバーニャ要塞の野良犬。リードにつながれ手入れされた東京の飼い犬と、炎天下に寝そべる、媚びない野良犬。自由と貧しさ、安全と束縛。この対比が、そのまま本の問いになっている。
旅の場面には笑えるところも多い。ただ、この旅にはもう一つ動機があって、キューバ編の最後で明かされる。亡くなった父のことです。軽やかな旅の記録が、そこで静かに一段深くなる。
俺は2024年の「七つの大罪」という記事で、人と自分を比べないことが大切だ、と書いた。そして、夢中になれる何かを見つけてほしい、と締めた。この本が3つの国を回ってたどり着く「血の通った関係と没頭」は、ほぼ同じ場所を指していると思う。
もう一つ、モンゴル編の承認欲求の話は、俺が2020年に書いた「承認欲求の奴隷になるな」の一歩手前を照らしてくれる。承認が欲しくなるのは、必要とされている実感が足りないからだ、と。
効くのは、競争や比較にじわじわ疲れている人。人見知りで、輪に入るのが苦手な人。旅エッセイを気楽に、でも深く読みたい人にも。
ただし、国や制度の見方は、全部が著者個人の印象と私的な体験です。旅行ガイドとして読む本ではありません。
悩みの出どころが分かれば、自分を責めすぎずに済む。この本は、その気づきを旅の形で手渡してくれます。
CHAPTERS章ごとの中身
出発前悩みは「人が作った仕組み」の中にあった
本は「はじめに」なしで、2014年2月のニューヨークから始まります。スーパーボウルのロケで初めて訪れた街で、広告が夢、挑戦、やりがいを迫ってくるように感じ、陽気なノリを求められて、自分の小さな楽しみ方が潰される。船からウォール街を眺めて、売れない時期(家賃3万円の部屋)に頭で鳴り続けた「成功しないと人生は楽しめない」という声の発信源は、ここではないかと直感する。
2016年6月、夏休みが5日取れると知って、念願のキューバへ。ツアーも便も満席だったのに、羽田–ハバナの往復が1席だけ空いていて即決した。
挟まれる「家庭教師」の章が、動機の章です。40歳目前でニュースが分からないのを恥じ、東大の院生をカフェで雇って、戦後史と経済を学び直す。一億総中流は年功序列と終身雇用に支えられていた。バブル崩壊後に崩れて、成果主義と「勝ち組/負け組」の時代になった。新自由主義という言葉は、この歳で知った。
競争の記憶も並びます。20代、友人の誕生会に最後のお金でタンブラーを贈ったら、ブランド品の中で場が冷えた。売れてテレビの出演本数1位になると、今度は稼ぎをからかわれて、同じ冷えた空気になる。勝っても負けても、居心地が悪い。
20代の悩みは宇宙的な悩みではなく、人間が作った一つのシステムの中の悩みだった。その解放感から、自著を「儀式」として捨てる。別のシステムで暮らす人はどんな顔をしているのか。比べるための「カード」を、自分の目で手に入れに行く。
勝っても負けても居心地が悪いなら、問題は勝ち負けじゃなく、比べる仕組みのほうにある。俺は、この章が本全体の土台だと思う。
キューバ屋上の朝と、要塞の野良犬
ホセ・マルティ空港は地方空港ほどの規模で、ガムテープ補修のベルトコンベアがある。クラシックカーのタクシーが並ぶのは、新しい輸入車を入れない代わりに、手持ちを守ってきた国の姿だと感じる。チェーン店の看板が一つもない夜の旧市街に見とれる。
2日目の朝5時。最初の景色は屋上から、と決めて、顔を伏せて上がってから一気に見上げる。古びた建物の群れ、ハバナ湾、旧国会議事堂、煙突の黒煙。汚くて古いのに、東京より活気を感じる。気づけば吹き出すほど笑っていた。顔色うかがいでも、金のためでもない、素直な笑いでした。
革命博物館で心に残ったのは、思想より革命家たちの「目」。日本で自分が思い描く命は、平均寿命まで楽しく「延ばす」もの。でも彼らは、命を「使う」目をしていた。
書名の章は、1763年築のカバーニャ要塞です。いちばん記憶に残ったのは、炎天下に寝そべる野良犬だった。汚れていても観光客に媚びず、気高い。東京でリードにつながれ手入れされた飼い犬より、魅力的に見えた。飼われるより自由と貧しさを選んだように見えるのは自分の幻想か、それともキューバという国そのものの姿か、と問いを置きます。ゲバラの旧邸では、住人の熱を感じない理由を、写真のゲバラが常に戦闘服で、「どこかへ向かう途中の人」の顔だったからだと結論づける。
延ばす命と、使う命。この対比はさらっと置かれているけど、この本の隠れた芯だと思う。
キューバカストロの演説と、広告のない街
革命広場では、ゲバラと、国内ではゲバラ並みの人気だというカミーロの巨大な顔、109mの記念塔を見る。カストロはここで4〜5時間(最長10時間という噂)演説した。10万人を引きつけたのは内容だけでなく、声やリズムが生む快感、つまりライブの力だろう、とラップ好きの芸人として推測する。確信を持つ人が本気で話すと、聴き手の耳を奪える。
昼食のロブスターの席では、ガイドブックの通貨単位の誤植で、朝のチップに現地の月収ほどの額を置いていたことが判明する。それを告白すると、寡黙だったガイドのマルチネスが大笑いして、一気に打ち解ける。笑いは国を問わず強い。
ホテル・ナシオナルから眺めるマレコン通りで、心地よさの正体に気づく。広告の看板がないのです。東京やNYの広告は、不要な物まで持たないと不幸だと思わせ、お金で人生を楽しめという価値観を押しつける。国交回復で、看板やチェーン店が溢れるのか。直して乗り続けるクラシックカーに、陰気でない、強い抵抗の意志を見る。来た理由を話すと「そういう人は多い」と言われ、広告に疲れているのは自分だけではないと知ります。
広告やパッケージの仕事をしてきた俺には、ここは正直、耳が痛い。足りないと思わせることが、いつのまにか伝える仕事の中身になっていないか。作る側こそ一度立ち止まっていい箇所です。
キューバ配給所と闘鶏で見た「平等」の中身
3日目の市場と配給所。現地案内の男性が「特別な仕入れ品」をこっそり見せるというので身構えると、鯛だった。社会主義ではコネのある順に珍しい物や情報が回る(戦後の闇市も同様)。資本主義育ちの自分には、お金を払う順のほうがまだフェアに思える。配給所ではカードと少額で、米、卵、砂糖、石けん、タバコ、ラム酒などを受け取る。財政難で配給は減り、医者や教師が観光タクシーを副業にしている。スーパーのヨーグルトは2種類だけで、日本の多すぎる選択肢は楽しさなのか、その陰で何かを犠牲にしているのか、と考える。
現地客向けのアイス店では、才能ある若者を早くから選別して職業学校で進路を決めるキューバでは、芸人を目指してバイトで下積みする道はほぼない、と知る。20代に社会から外れた気分でいたけど、それは自分で選べた道だった、と気づき直します。
闘鶏場からの帰りに、ヴィラでラム酒と家庭料理の歓待を受け、裕福な家を見学する。欧米製家電やゲーム機がある隣に、トタン屋根の小屋。亡命は禁止なのに、海外の家族からの送金で亡命者のいる家が豊かになる。お礼を渡そうとして断られ、「本当のキューバを知ってもらえてよかった」と返される。キーワードは amistad(友情)。サービスを金で買う生活で鈍っていた自分に気づく。
日本は機会は平等で結果は不平等、キューバは結果の平等を目指すが機会は不平等。競争に負けて貧しいのと、コネがなくて貧しいのでは、前者のほうが納得できそうだ、と37歳で実感する。ただし上位5%しか勝てない競争は誰も望んでいない。自分は「中の上でいい」が、今の日本ではそれすら大変かも、とぼやく。
どの負けなら納得できるか。社会の仕組みを、この問いで比べるのは正直だと思う。
キューバマレコン通りで明かされる父のこと
最終日は、ハバナの裏道を目的なく歩く。人には相性の良い相手と共鳴する「音叉」がある、と感じる章は誰かとの対話の形で進み、最後に、スマホに映した亡き父に話しかけていたと明かされます。
続くマレコン通りの章で、旅の動機が語られる。子供時代、いじめられている子を父が静かに助けた日から、父は自分のヒーローだった。2015年春から入院、在宅での看取り、死の3日前のパフェ、2016年4月14日の死。仕事は普段通りこなせたが、父が近くにいる感覚に戸惑った。「37歳まで父がいて幸運」と言われ、東京では悲しむことさえ自意識過剰に感じる。だから誰も知らない場所で悲しみたくて、父が行きたがっていたキューバに来た。
ところが、悲しみの気分にはならなかった。父がこの世に満ちていて、死後のほうが近いと実感する。箱根の家族旅行では照れてアメフトの話しかできなかったが、感謝や愛情は、そうした雑談に含まれていた。Wi-Fiがないからマレコンに人が集まって話す姿を見て、本心は画面の文字でなく、声や顔に宿ると思う。父は、競争社会の中の絶対的な味方だった。
帰りの機内食の和食に、日本人の集中力と、先人の競争が作ったインフラへの誇りを感じる。一方で灰色の東京では、バカにされないために手に入れるべきもの(仕事、金、外見、若さ、家庭)に終わりがない。本当に見たかったのは、競争相手ではない人同士が話すときの表情、血の通った関係で、その象徴が父だった。旅は東京に色を与えるためで、街はすぐ灰色に戻るから、また色を見に行かなければならない、と結ばれます。
悲しむために来た場所で、悲しみにならなかった。その正直な書き方が、この旅の記録をいちばん深いところまで連れていっている。
モンゴル一本槍の発想と、必要とされる実感
チンギス・ハーン騎馬像の地下展示で聞く槍の話が、この編の核です。三叉は儀式用で過去、現在、未来を表し、一本槍は戦い用で「今」だけを表す。漫才前の舞台袖を思い出す。緊張の正体は未来、つまり失敗への恐れだ。「成功を想像しろ」は根っから前向きな人にしか効かないが、過去と未来の両方とのつながりを切り、冒頭のセリフだけに意識を絞ると落ち着けた。今も袖で一本槍を思い出す、と。
13世紀村は、王侯、シャーマン、職人、警備、文化、遊牧民に分かれた再現施設です。物見櫓から見下ろして、全員がプロとして分業で集団を動かしていたと気づく。20代の売れない頃、バイトを「いつまで続けるのか」と言われて後ろめたかったけど、働いて報酬を得ていれば分業の一端は担っている。実感できなかったのは、東京という集団が大きすぎたからではないか。
そこから、「承認欲求」が流行語になったのは、必要とされる実感を満たす機会が減ったからでは、という見立てに進む。フォロワー数の競争は、昔からの所持金の競争と同じく、どれだけ必要とされているかの数値化ではないか。だから、金やフォロワー数で測られない居場所を、職場以外に作ろうと決める。
承認が欲しい自分を叱るより、必要とされる場所を増やすほうが早い。俺が2020年に書いた、他人の評価で自分の価値は変わらない、という話の手前にある設計図だと思う。
草原の夫婦の章では、現役の遊牧民一家を訪ねます。ゲルの外には発電機とアンテナ、バイク。中にはベッド3つ、薄型テレビ、冷蔵庫。著者はここで初めて結婚願望を自覚するが、見たのは結婚というより共同生活の魅力だった。昼はそれぞれ働き、夕方ゲルに戻り、話す日も話さない日もある。向き合うより、並んで同じ方向へ同じ歩幅で進む関係なら望める、と。
アイスランド仮病の初日から、場を回す側へ
アイスランドは3年前の年末の旅で、ロンドン発のツアーに一人参加します。「参加者は大半が現地の人、一人旅も多い」と聞いて申し込んだのに、ガイドも参加者もほぼ日本人で、家族とカップルばかり。10人掛けの円卓で会話が止まった重圧に、腹痛のふりで夕食を途中で抜け、39歳の仮病と自嘲しつつ、機内のナッツで夜をしのぐ。
翌日、誰かが最初に話しかけたのをきっかけに、参加者が次々に声をかけてくれる。本当は自分から話しかけるべきだった、と反省する。旅の目的は年越し花火で、この国では年末の数日だけ強力な花火が市販され、売上がボランティアのレスキュー隊の活動費になる。丘の上で360度の花火に囲まれ、夜通しの爆音で心の底の澱が流されていく感覚を、除夜の鐘になぞらえます。
シンクヴェトリル国立公園では、二つの大陸プレートが年に数cmずつ離れる「地球の裂け目」を歩く。ストロックル間欠泉が数分おきに噴き上がるのを見て、怒っても不安定でもいい、熱くて当然だと許された気持ちになる。「のんびりした北欧」だと思っていた国は、実感では「熱い国」だった。抑圧された熱がいつか噴き出す姿に、自分の恥ずかしい熱も肯定できる、と救われる。
初日の疎外感の大半は、幼稚園の頃から自分で作ってきたものだと悟り、後半は場を回す役に回る。別れ際の「では、また」が好き、というくだりも残ります。
人の多い場所が苦手な俺には、耳が痛いけど救いのある結論です。壁は、案外自分の側に建っている。
あとがき・解説「空気を読め」と「個性で稼げ」の板挟み
あとがき「コロナ後の東京」は、緊急事態宣言前、ホテルの一室から一人で収録した場面から始まります。閑散とした銀座で、閉じたブランド店を撮りながら高揚し、その理由を「キューバに似ているから」と分析する。父が亡くなる直前、家族へ「人と逢うこと」の大切さを伝えるメールを送っていたことにも触れ、父の生きた時代を知るために家庭教師に戦後経済史を学んだのだと明かします。
不況打開に格差を選んだ新自由主義が、勝ち組・負け組、婚活の「スペック」、マウンティングなど、人を分断する言葉を生んだ。3カ国を見て分かった日本の良さは、集中力の高さ、清潔さ、インフラ、災害時の秩序。最大の違いは「世間」への強い信仰で、マナーの良さを生む一方、裏切った者は激しく叩かれる。世間は「空気を読め」、新自由主義は「個性で稼げ」と矛盾し、その板挟みで、繊細で打たれ弱い少数派は生きづらい、と整理されます。
「サル山の掟」の節では、幼い頃にプラモデルの箱を奪われ、ただ見送った記憶が語られる。競争させて勝者を優遇する構図は、コロナ後も変わらない。3カ国で見つけた「隠しコマンド」は、「血の通った関係と没頭」。傷ついた者同士の絆は経済を越え、相手は本の登場人物やラジオパーソナリティでもいい、と。
結果から来る自信は失敗で崩れる。自分の自信とは、欠点ゆえの回り道で出会えた関係と没頭のことだ。内面を覗き続けて欠落の構造を理解したら、諦めと感謝が生まれ、目が外へ向いた。もう比べたい国はない、という一文で本文は閉じます。巻末にはDJ松永さんの解説があり、若林さんのラジオで同じ劣等感を抱える人がいると知って救われた体験を、個人的な手紙として綴っています。
比べるのをやめようと力んだわけじゃない。外を見続けた結果、比べる必要がなくなった。この順番が、この本のいちばん誠実なところだと思う。
LESSONS明日から使える教訓
- 悩みを、自分の資質だけのせいにするな背景にある制度や経済を学ぶと、悩みの見え方が変わる。分からないことは、素直に専門家に教わる。俺は、この「自分を責めすぎない」視点が、この本の土台だと思っています。
- 本番前は、最初の一言だけに集中する緊張の正体は、未来への恐れ。過去とも未来ともつながりを切って、冒頭のセリフだけに意識を絞る。プレゼン的にいうと、全体を暗記するより、最初の一言を磨けってことです。
- 数字で測られない居場所を持つ組織が大きいほど、自分の貢献は見えにくい。本業の外に、お金やフォロワー数で測られない居場所をつくっておく。それが、結びの「血の通った関係と没頭」の入口になると思う。
CONCLUSION俺の結論
結論。比べる場所から、たまに降りろ。
明日やることは二つ。一つは、自分を苦しめている「こうあるべき」が、どこから来たのかを一度調べてみること。案外、個人の問題じゃなく、人が作った仕組みの問題だったりする。もう一つは、お金や数字で測られない居場所を、一つ思い浮かべること。思い浮かばなければ、それが最初の宿題です。
旅は灰色の街に色を足すためにある、と若林さんは書く。街はすぐ灰色に戻るから、また色を見に行く。遠くの国じゃなくてもいい。本当に会いたい人に会いに行くのも、立派な旅だと思います。
NEWS関連ニュース
この本のテーマについて、最近話題になったニュースです。
オードリー若林さん直木賞候補に 初小説「青天」、5作ノミネート
第175回芥川賞・直木賞の候補作が発表され、お笑いコンビ「オードリー」の若林正恭さん(47)の初めての小説「青天」が直木賞の候補になりました。直木賞の候補は計5作で、選考会は7月15日に東京都内で開かれる予定と報じられています。
この本とのつながり:著者の若林さんが、書き手としても注目を集めたことを伝える報道。本書で綴られる劣等感や熱の言葉と合わせて読むと、書き手としての若林さんが見えてきます。
FOR YOUこんな人におすすめ
- 競争や比較に、じわじわ疲れている人
- 人見知りで、知らない人の輪に入るのが苦手な人
- 家族を亡くしたことのある、あるいはこれから向き合う人
合わないかもしれない人:旅行ガイドとして使いたい人。観光情報の本ではなく、著者個人の内面の記録です。
FAQよくある質問
『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』はどんな本ですか?
お笑いコンビ・オードリーの若林正恭さんが、キューバ、モンゴル、アイスランドを一人で旅したエッセイです。文春文庫で、競争社会の息苦しさと亡き父への思いが軸になっています。
書名の「野良犬」とは何のことですか?
キューバのカバーニャ要塞で、炎天下に寝そべっていた犬のことです。観光客に媚びず気高く、リードにつながれた東京の飼い犬より魅力的に見えた、と書かれています。
なぜキューバに行ったのですか?
表向きは、別の仕組みの国を自分の目で見て、比べるための「カード」を得るためです。本当の動機は、亡くなった父が行きたがっていた国で悲しみたかったことで、キューバ編の最後で明かされます。
3つの国の旅の構成はどうなっていますか?
キューバ(ruta1〜26と東京への帰路)、モンゴル、アイスランドの順です。巻末に、あとがき「コロナ後の東京」とDJ松永さんの解説が付いています。
モンゴルの「一本槍」とは何ですか?
チンギス・ハーン像の地下展示で聞いた槍の話です。三叉は過去・現在・未来を、一本槍は「今」だけを表します。著者は漫才前の緊張を未来への恐れだと気づき、一本槍の意識で落ち着くようになります。
アイスランドの旅では何が起きますか?
ロンドン発のツアーに一人で参加しますが、初日は輪に入れず、仮病で夕食を抜けます。翌日、誰かが話しかけたのをきっかけに打ち解け、疎外感の大半は自分で作っていたと悟って、後半は場を回す役になります。
「隠しコマンド」とは何ですか?
あとがきで、3カ国で見つけた答えとして語られる言葉で、「血の通った関係と没頭」のことです。自信とは、欠点ゆえの回り道で出会えた関係と没頭のことだ、とされています。
この旅は、生きづらさとどうつながっていますか?
新自由主義の「個性で稼げ」と、世間の「空気を読め」という矛盾した板挟みが生きづらさの正体だ、と整理されています。その対極にある国々を見に行った旅でした。
旅行ガイドとして使えますか?
向きません。観光情報の本ではなく、著者個人の内面の記録です。国や制度の見方も、著者個人の印象として書かれています。
DJ松永さんの解説には何が書かれていますか?
若林さんのラジオを聴いて、同じ劣等感を抱える人がいると知って救われた体験を語る、感謝の手紙のような内容です。
MONOGENIC伊丹谷のブログから
- 七つの大罪人と自分を比べないこと、夢中になれる何かを見つけること。「血の通った関係と没頭」と同じ場所を指している
- 承認欲求の奴隷になるな他人の評価で自分の価値は変わらない、と書いた記事。モンゴル編の「必要とされる実感」の話とつながる
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